子ども自身の生きづらさを改善するために 副作用が心配でもリスペリドンを息子に服用させる理由
今小学5年生の息子は生まれた時から、ずっと育てづらかったです。
ひと言でいうなら「生まれてからずっと反抗期」。
感情の起伏が激しく、こちらが求めるコミュニケーションを取ることはほぼ不可能でした。
今は自閉症やADHDの薬であるリスペリドンとインチュニブ、怒りを抑える漢方薬である抑肝散化陳皮半夏を飲んで、ようやく落ち着いてきました。
薬を飲み始めて良かったと思っていますが、薬漬けになるようで迷いがなかったわけではありません。
小学4年生で発達クリニックへ
育てるのが本当に大変で、辛くて、しんどくて。
私の精神がどうにかなるか、息子を刺してしまうか、いつそうなってもおかしくないと思いながら息子を育ててきました。
もちろん、保育園や小学校の先生にも相談したことがありましたが、「大丈夫です、通常の範囲内です」と言われてきました。
それが、小4で「授業中に暴れて困っています」と急に言われて。
発達クリニックに通うことになりました。
診断名はつかなかったけれど、薬を飲むことが決まり、心からホッとしました。
やっぱり薬に頼らないといけない状況だったんだ、私の努力不足ではなかったんだ、と安心しました。
最初の処方は抑肝散化陳皮半夏とリスペリドン
初診で処方されたのは2種類の薬でした。
1つめは、「怒りの感情を抑える」ための漢方薬、抑肝散化陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)です。
2つめは、「周りがよく見えるようにする」ためのリスペリドンです。
先生がリスペリドンについてしてくれた「周りがよく見えるようにするため」という説明が、私は好きです。
専門的に薬の機能や効果を説明することはできるけれど、息子が飲むことでどうなるのか、とても分かりやすい。
「中枢神経系に作用するドーパミンやセロトニンの機能を調節することで、不安感や緊張感、意欲の低下などの症状を改善します。通常、統合失調症、小児期(原則として5歳以上18歳未満)の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の治療に用いられます。」と言われても、具体的にどうなるんですか…?ってなりますよね。
リスペリドンは副作用に注意が必要
効果が期待できる一方で、リスペリドンは副作用に注意が必要です。
薬局では、薬と共にリスペリドンの説明小冊子をもらいました。
そこに書かれている副作用としては、「不眠・眠気」「食欲の増加」「不安」「倦怠感」「動悸」「体重の増加」「便秘」「めまい」「足がムズムズしてじっと座っていられない」「手足の震えや筋肉のこわばり,小刻みな歩行」など。
また、googleで検索してみると「リスペリドン 廃人」と予測検索で出てくるんです。
発達系の薬は飲み方を間違えると、やる気や活気までなくなってしまい、その子の本来の良さまでなくなってしまうこともあるのだとか。
息子に飲ませるか悩んだ
正直言ってしまうと、元気がなくなっても、家庭が平和になるならそれでもいいと一瞬思いました。
息子の感情に散々かき回されて、常にピリピリモードだったし、この子が静かになってくれればどれだけ楽か。
でも、天真爛漫さが魅力なのも事実です。
友達も多いし、人を笑わせるのが好きです。
どんな副作用が出るか全く分からない薬を、飲ませていいのか、とても悩みました。
親の都合でリスクの高い薬を飲ませるのは許されるのだろうか、と。
息子自身が泣きながら飲むことを望んだ
私は飲ませるかどうか決断できず、息子に相談しました。
小冊子に書かれている副作用や、元気がなくなるリスクも説明し、キミはどうしたいと思う?と聞きました。
そして返ってきた反応は予想外のものでした。
息子が急に泣き始めたんです。
戸惑いました。
何の涙だろう…。
しばらくして息子が言ったのは「このままちゃんとした大人になれるか心配でたまらない。薬を飲んで普通の大人になれるなら薬を飲みたい」ということでした。
息子が自分の置かれている状況に対して苦しい思いをしているのだと、初めて知りました。
リスペリドンを飲んでみて
そして、リスペリドンを飲み始めることにしました。
副作用がどんなふうに出てくるか心配でしたが、幸い息子には気になるような副作用は見られませんでした。
薬もあっていたようで、息子の態度に落ち着きが見られるようになりました。
自分でもコントロールできなかった負の感情が少し軽減され、他人に対する優しさや、物事に集中して取り組む姿勢が見られるようになりました。
カメラを向けるだけでぶちギレていた息子が、ピースサインをして撮ってもらうのを待つようになりました。
主治医の先生は「頑張ろうとしても、負の感情がずっと蓋をして邪魔をしていたんです。それが取れて、この子の本来の良い部分が出せるようになってきたんです」と言ってくださいました。
薬が性格を良くすることはない。
薬は、ただ邪魔をしているものを抑えてくれるだけだから、そこ以降の頑張りは本人の頑張りだから褒めてあげてほしい、と。
本人のためにも薬を試す価値はある
感情の起伏の激しさは抑えられてきたのですが、それでも日々、細かなことが気になってイライラすることは続きました。
私は前に比べれば全然大したことないと思ったのですが、先生から提案されたのは新しい薬を試すこと。
「まあいっかと思える」ようになるインチュニブという薬です。
これも息子が自分で飲むことを決めました。
そして、これもまた息子には合ったようで、副作用もなく効果も出ています。
薬を飲み始める前、私は自分の都合でリスクのある薬を飲ませる自分に罪悪感を感じました。
でも実際は息子自身も薬で改善することを望んでいたし、今も「あの時病院に行き始めてよかった」とたまに言っています。
発達系に課題がある子は、自分でも押えられない負の感情や負の言動に振り回されているんです。
でも、周りからは意図的にやっているように見えるから、理解してくれない大人たちにただ怒られ続け、どんどん心を閉ざしていきます。
考え方や価値観、感じ方が普通の人と違うから、本人たちも何が悪くて、なぜ怒られるのか、なかなか気づけません。
親が気づいてあげられるといいのですが、息子のように診断名が付かない程度の「特性」だと、障害なのか性格なのか、判断が難しいし、気づいて上げられるまでに時間がかかってしまいます。
でも、もし親が育てづらさを感じているなら、子どもたちも同じかそれ以上に生きづらさを感じているはず。親のためではなく、子どもたち本人のために、自分らしくありたい気持ちを邪魔するものを取り払うために、薬を飲むことは意味があると思うのです。