声帯溝症の治療にフィブラスト注射という選択肢もあり 私は効果がありました
私は結構ひどい声帯溝症です。
今回、手術ではなく注射での一時的な治療をしたので、その備忘メモを残します。
声帯溝症とは
声帯溝症とは、治療法が確立されていない難病指定の病気です。
声帯は唇のようなものが左右に2つあって、それが開いたり閉じたりして声を出すのを助けます。
声帯溝症の場合は、その唇のところに溝があって空気が漏れてしまう病気です。
溝があると声がかすれます。
また、溝があってもきちんと閉じればいいのですが、すきまが大きくて閉じないこともあります。
すきまが閉じないと、空気が常に漏れることになるので、大きな声が出なかったり、長く声を出し続けることができません。
声帯溝症のつらさ
声帯溝症のつらさは、周りはそれを病気だと認識していないのでズケズケと(悪意なく)突っ込んでくるところ。
そして、コミュニケーションを取りたいと思っても、思い通りいかないことが多いことです。
声帯溝症の症状としては、かすれ声だったり、話す時に聞き取りづらかったりするくらいなので、病気だと気づきづらいです。
本人でさえ、それが病気だと気づかないことだって多いと思います。
私もずっとハスキーボイスが特徴、ということで、まさか声帯に異常があるなんて思わずにずっと生きてきました。
声が”普通”に出ないと、とにかく突っ込まれまくるんです。
店員さんや初めて会う友達などには9割以上の確率で、「風邪ひいてるの?」「声どうしたの?」と聞かれます。
相手に悪意がないことはわかってるんですが、私の声ってそんなにおかしいの?って、やっぱり都度凹みます。
あとは、思い通り話すことが難しいのもかなりメンタルにきます。
仕事で15分以上プレゼンテーションをしなければならないときは、途中で声がかすれて出なくなります。
電話で話していると、結構聞き返されます。
がやがやしている居酒屋や子どもの運動会などで人と話すときは、おなかから声を出しても聞き取ってもらえなかったりします。
人とたくさん話した時は、翌日まで声がかっすかすになります。
一息で声が4~5秒しかもたないので、カラオケは恐怖です。
子どもに絵本を読んであげるだけでも、酸欠で頭が痛くなってきます。
声帯の病気だなんてみんな思わないから、当然ながら普通にコミュニケーションできる前提で接してきます。
でもそれができないから、相手はがっかりした感じになるんです。
声帯溝症は、症状としても辛いけれど、それ以上にメンタル面でのダメージが大きい病気だと思います。
確立された根本的治療法がまだない
どうしても声を普通に出せるようになりたくて、3年前に手術をしました。
自家脂肪注入という、自分の脂肪を声帯に入れて溝を膨らませる手術です。
でも、うまくいきませんでした。
そして、3年経った今も、この手術なら確実に治療できるというのはないそうです。
新しい手術方法も試されているそうですが、日本ではまだ症例も少なく、必ずこれでよくなるという確証はありません(悪化する可能性もあり)、と言われると2回目の手術には踏み切れませんでした。
声帯へのフィブラスト注射での治療
手術での治療はリスクがあることに加えて、術後の回復にも時間がかかるので、今回は注射での治療をすることにしました。
声帯にフィブラストという薬を注射する方法です。
効果は一時的(数か月から1年)ですが、失敗する(永久的に悪化する)リスクは低く、日帰りで施術してもらえます。
フィブラストはもともと床ずれの患者さんが使っていた薬らしく、細胞を再生させる働きがあるそうです。
成長因子ともよばれるもので、それを声帯に注射すれば声帯の溝のところの細胞が再生されて溝が浅くなるという原理です。
私は溝が深く、隙間も広いのであまり効果がないかもしれない、と言われましたが試してみることにしました。
声帯へのフィブラスト注射の方法
最初に麻酔をかけるのですが2段階でやります。
まず、耳鼻科でよくある鼻から薬を吸う機械があると思うのですが(ネブライザーというやつです)、それで4分間かけて軽く麻酔をかけます。
少し喉の奥が動きづらくなった感じがしますが、息は普通にでき、つばを飲み込むのも若干の違和感がありながらもできます。
その後、診察台に移動したら、内視鏡を鼻から声帯まで突っ込んで、整体に直接麻酔液をかけます。
辛そうというか苦そうだな、とわかる感じはしますが、そこまでまずさは感じません。
声帯に麻酔がかかったら、喉の外側から注射針を声帯に刺してフィブラストを注入します。
喉に注射するの!?って聞くだけだとドキドキしますよね…喉側の皮膚には何も麻酔もしてないし。
でも、刺した痛みは感じませんでした(刺してるのがなんとなくわかる程度)。
声帯に薬を入れる時は、押されている圧迫感はありますが、この時も痛みとは違うかな。
診察台に座って5分もかからなかったと思います。
手術直後から呼吸は普通にできるし、つばも飲み込めます。
(鼻からの内視鏡をやった時は、息はしづらいし、つばも飲み込めないから出さなきゃいけないしで、やったあとも1時間くらい地獄だったんです。)
麻酔薬が気になる場合はうがいもすぐにできます。(ちょっと血が出るけど、ちょっとだけ)
1時間くらい経てば、飲食も普通にできるようになります。
声は当日だけ出してはいけませんが、翌日からは大声を出したり歌ったりしなければ話してOK。
やってみるまでは緊張したし、恐怖感もありましたが、やってみたらこんな気軽なの!?という感じでした。
内視鏡よりも全然ラクチンです。
フィブラスト注射をしてからの経過(当日)
注射をしてから10分くらい待合い室で待機して、そのあとはすぐに帰れます。
1時間くらいは麻酔が効いているので、喉がちょっとしまったような感じがしますが、そこまでの強い不快感ではありません。
1時間半経過後に水を飲んでみたら、詰まる感じもなく飲めました。
ただ、3時間後に食事をした時は、むせそうになったので、固形物はいつもよりゆっくり咀嚼するのがいいと思います。
当日は声を出してはいけないので、家族と一緒に住んでいる人は要注意です。
うちは、何度も予告していたのに、子どもたちが何度も声をかけてきました…。
当日寝るまでの間も、針を刺した喉のところは、全く痛みは感じません。
ただ、耳の下のあたり(おたふくかぜで腫れるあたり)や耳の奥(中耳炎で痛くなるあたり)に鈍痛は感じました。
そして、寝る頃には声帯自体にも少し痛みを感じました。
眠れないほどの痛みではありませんが、ジンジンと響いてくるような感じです。
明日の朝、声がどうなっているか…ドキドキしながらおやすみなさい。
フィブラスト注射をしてからの経過(2日目)
声帯に注射した薬が馴染むまでの間は声が不安定になる可能性があります。
また、注射をしたことで声帯がむくんだり充血したりすることでも、声が不安定になることがあります。
注射をして翌日から声がうまく出るようになるわけがない、と思っておいた方がいいです。
(3年前に手術をした時は、3カ月くらいは周りの人がギョッとするくらい変な声になったので、覚悟は決まっていました。)
少なくとも1~2週間はコミュニケーションを取りづらい覚悟で私は注射を受けました。
そして、いよいよ2日目の朝。
日曜日だったので、子どもたちが起きてくるまでは声を出さずに待機…。
無言で家事やパソコン仕事をして2時間経過した時、娘が起きてきました。
「おはよう!」
おおおお!!声が普通に出た!!!
ちょっとガサガサした感じ(痰が絡んだ感じ)はあるけれど、それは今までも同じこと。
大きな声が出ないけれど、それも今までと同じこと。
多少、声を出す時に耳や声帯の辺りに張った感じや唾を飲み込む時にかすかな違和感はしますが、全然許容範囲です。
家の中で話す分には何の問題もなく声量がでるし、注射前よりもクリアに話せるようになった気がします。
今まで本当によく「え?」「なんて?」って聞き返されていたんですが、それがほとんどなくなりました。
ここからさらに良くなっていくのかな…と期待してしまいます。
いろんな事情で手術が難しい人は、注射での治療がオススメです。
効果が一時的であっても、とても負担が軽いので(気持ち的にも身体的にも時間的にも)、効果が切れたらそのたびに繰り返し施術を受けられます。
声帯が治ったらどんなに話しやすく、ストレスがなくなるのかが体験でき、今後の治療方針を考える材料(多少リスクがあっても根本治療のために手術をするのかどうかなど)にもなると思います。