声帯溝症という病気 辛さと治療法、術後の経過について

ガサガサと声がかれている声が出しづらく大きな声も出ない
ずっとそれが当たり前だったから、そんなものだと思ってましたが、実は声帯溝症という病気でした。

声がもっとスムーズに出せるようになったら、人生がもっと明るく楽しくなるに違いない。
外科的手術治療を受けようと決断をするのに、迷いはありませんでした。

 

声帯溝症という病気

声帯溝症(せいたいみぞしょう)とは、その名の通り声帯に溝ができる病気です。
声帯というのは1対の筋肉でできていて、それが唇のように(葉っぱの裏にある気孔のように)、開いたり閉じたりすることで声を出すことができます。

でも、その閉じる部分に溝ができてしまうと、閉じても隙間ができて、そこから空気が漏れるんです。

その結果、声がかれます
一生懸命、おなかから発声しても空気が漏れるので大きな声は出ません
声帯もすぐに疲れて、カスカスの声ですら出なくなります。

 

日常生活への影響、その辛さ

子どもの頃からずっとだったので慣れてはいますが、不便なことはとても多かったです。

特に話し始めに声が出づらい

話し始めれば、カスカスながら声は出るんです。
でも、問題は話し始めのところ。
話す内容が短ければ短いほど、声が出なかった時のリカバリーがしづらいんです。

だから、きっとみんなには何ともない出欠と自己紹介は大嫌いでした。

出欠の返事は「はい!」だけなので一発勝負
声が出ない時に備えて、いつも大きめに手を挙げてアピールしていました。
実際、多くの場合は名簿から一旦目をあげて、目視で確認されていましたね…。

自己紹介で「あおたろうです」とだけ言う時は、「た」くらいからは聞き取れる程度には声が出てくれるかな…みたいな心境。
子音から始まればカスカスの声でも聞き取ってもらいやすいのですが(聞き取れなくても何か言っているということは伝わりやすい)、「あ」は母音なので何か言ったのかどうかもわかってもらえないことが多くて。

何か言った?なんだって?と聞き返される時の反応が怖くて、情けなくて、申し訳なくて、悲しくて、仕方なかった。

 

10分を超えるプレゼンができない

社会人になってからは、仕事でプレゼンする機会も増えますが。
緊張するとか人前に立ちたくないとかではなく、声がもたないという理由で苦手でした。

プレゼンを頼まれるといつも「何分枠ですか?」と確認し、10分以下なら引き受けていました。
それ以上なら、要点のみにまとめるか、何人かで分担するか、途中で声が出なくなった時のために代理を立てておくか。

自分で考えた企画やまとめた報告書は、もちろん自分の言葉ですべて発信したいのに、それができないのはもどかしかったです。

 

飲み会での会話は持久戦なので時間配分を考える

大きな声が出ない私にとって、飲み会への参加は戦略を必要とするものでした。

話さなければいけない時間が長いことに加えて、周りがザワザワとうるさく大きな声を出さなければならない

2時間の飲み会であれば、ずっと同じ調子で話し続けられるように、話したいことがあっても抑えめにしました。
最初に話し過ぎと、声帯が疲れて最後はほとんど声が出なくなるから、少しずつ小出しになんとか2時間持たせる、という感じ。

結果的に、口数が少ないけれど、ポイントは押さえて発言する人、というキャラになりました。
そりゃそうだ、たくさん話したいことがある中で、選び抜いたことだけ言ってるから。

 

絵本を1冊読んであげられない

子どもを産んでからは、子どもとの遊びとして「絵本をよんであげること」を助産師さんなどに勧められましたが、それがまたとても苦痛でした。

短い絵本でも声を出すのが辛くて、1冊読み通せないんです。
絵本ってずっと自分が連続して声を出し続けるので、対話する以上に負担が大きいです。
絵本の途中で声が出なくなって終わることがほとんどだし、もし読み通せたとしてもそのあとは喉が痛くて
絵本は私の中で最も嫌いな遊びでした。

ママ友などから、夜寝る前に3冊くらい読んであげている、と聞くたびに子どもたちに申し訳ない気持ちがあふれ出てきました。

 

声帯溝症の様々な外科的治療法

声帯溝症は、声帯の物理的な欠陥によるものなので、服薬やリハビリ、トレーニングで治るものではありません
外科的に手術をして、声帯の形を整えるしかないんです。
その治療法は病院によって様々です。

シリコンなど人工物を埋め込む手術。
耳の裏にある筋肉や軟骨を移植する手術。

私が選んだ病院では、頬っぺたの脂肪を声帯に注射して膨らませるという手術でした。
全身麻酔で1週間程度の入院が必要とのことでしたが、迷わず手術することを選びました。

普通にみんなみたいに声が出るようになったら、絶対人生が変わる!と確信があったから。

 

術後の経過(1カ月)

術後1週間は声を出してはいけません
声を出すと声帯が震えて、声帯に注入した脂肪が漏れ出てしまうから。

声を出せないなんてもどかしくてたまらないだろうな、と思っていましたが。
そんなこと気にする暇もないくらい、喉の痛み、発熱のだるさ、頭痛がひどかったです。
脂肪をとるために切った頬っぺたの痛みなんて無いに等しいものでした。

中でも喉は何もしていなくても激痛が走り続けていて。
手術当日の夜から食事はできるのですが、何を食べてもカッターの刃を飲み込んでいるような感じでした。
水分でさえ喉を通る時の痛みは悶絶ものでした。

喉の痛みは次第に引いて、いよいよ1週間後に退院&発声です。
でも、声が全然出ない!
出そうと思っておなかから空気を出そうとしても、声帯で詰まる感じで出てこない!
これは思ってたのと全然違うぞ…。

先生にはちょっとずつ腹式呼吸で練習すれば出るようになるから、と言われましたがかなり不安でした。
退院後1カ月経っても、耳元で話さないと聞こえないくらいの声量しか出ず。
しかも声質もひどく高いトーンで、話しかけた人がギョッと反応するような「普通ではない」状態でした。

 

術後の経過(3カ月)

術後、大体2~3カ月で普通に声が出るようになります、と言われていました。
それを信じて3カ月経ったけれど、声が普通には出ない
至近距離でないと聞き取れません

そして声質も、声帯の形のせいか高いトーンと普通のトーンの2重になるんです。
引き続き、明らかに異常な声なので「風邪ですか?」とも聞けないくらいの感じ。(だって風邪じゃないとわかるから。)

え…本当に大丈夫!?毎日不安でした。

 

術後の経過(1年)

いろんな声帯溝症の術後経過をネットで見ていると、6カ月から1年で落ち着くというものもあります。
だから、1年はゆっくり気持ちを落ち着けて、信じて待とうと思っていました。

1年経って、隣の部屋から話しても聞こえるくらいにはなりました。
ただ、声がガサガサとダブっている感じは健在です。
高いトーンと普通のトーンの明らかなハモリではなくなりましたが、綺麗な一層の声(つまり一般的な普通の声)ではない

風邪を引いたりすると、喉に痰がからんでガサガサというかガラガラというかイガイガというか、そんな感じになりますよね。
ずーーーーっとそんなです。
咳ばらいをしようが、のど飴をなめようが、ずっとガサガサ

大きな声は全然出ません
そして、長く話していると、やっぱり声の体力がもたなくてしんどくなります。
ガヤガヤと周りがうるさい場所(居酒屋とか運動会とか)では、大声を張り上げているつもりでも、隣の人に「え?なんて?」と何度も聞き返されます。

 

でも手術はしてよかったと思う

手術前に何度も先生に確認しました。
「今より悪くなる可能性はありませんか?」と。
「ありません、必ず声は出しやすくなります」と自信を持って返事をされていたので信じていたのですが、決して期待していたような結果にはなりませんでした
友達には医療ミスだ!と言われたりもするほどに。

私だって、今の状態に満足しているわけでは決してありません
今も変わらず子どもの友達からは「声どうしたの?」「喉ガラガラだね」「風邪治らないの?」「なんでそんな変な声なの?」と常々聞かれます。
それくらい、普通とは違う声です。

もしかしたら、声が出ている状態で比べたら、声質は手術前よりも悪くなったかもしれません。
でも、自分としては手術はしてよかったと思います。

その理由は3つです。

1.話し始めからきちんと音として声が出せるようになったから

「こんにちは」の「こ」から音が出るようになりました。
それまでは、誰かに挨拶をしても聞こえていないような反応をされる事が多くて、だんだん挨拶をするのも怖くなりかけていたのですが。
ガサガサ声でも挨拶をしているのは伝わるようになりました。

2.前よりは声帯の持久力がついたから

手術前はだんだん声が出なくなっていく時限爆弾のように、残りの力と話したい内容を天秤にかけていたのですが。

今は、声質は悪く声量も出ないですが、長い間話続けられるようになりました。
会議室でのプレゼンだと相変わらずしんどいです。
でも、マイクがある環境なら30分でも1時間でもいけるかもしれない!

3.手術をしなかったらもっと後悔していただろうから

普通の人でさえ、加齢とともに声帯は弱るんです。
手術をしなかったとしても、声帯溝症の症状は年々ひどくなり、ますます症状はひどくなっていたでしょう
手術をしていなかったら、手術すればよかったかな…とずっと迷っていたと思います。
やっぱり手術しようかな、とも思い悩み続けていたと思います。

思ったようにはならなかったけれど、でもやれることはやったと思えます。
手術をしないままよりは、いい状態なんだと思えます。

もっと大きなきれいな声が出たらな…というのはあるけれど、誰だって叶う夢ばかり持っているわけではないですもんね。
個性として、割り切って付き合っていこうと思います。

 

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